TOWEER はかなりの種類のイラストが採用されていて
5回ごとのタレントの描いたイラスト（確定）を除けば
ランダムで排出されているにもかかわらず、
実際のプレイでは体感的に「同じイラストが連続で現れることが多くない？」と思うことがありますね。
この投稿ではTOWEER のイラスト抽選が偏りのある乱数となっているのかどうかを考察します。
ただし先に断っておきますが、詳細なソースコードを確認しない限り明確な答えが得られるわけではありません。
以下はただの憶測です。
前提：確率は偏る
サイコロの目のある目が出る確率は1/6 ですが、これは少ない試行回数において「6回に1度くらいは出る」ということを意味しません。
とくに「6回振ったのだから1回も出ないのはおかしい」というのは誤った考え方になります。
そんなんわかってるわという方は読みとばしていいです。
体感派の方も裏表の二通りしかないコインを考えていただければと思います。
実際に10回ほど投げた結果が以下です。
表、表、表、裏、表、表、表、裏、表、表
表80％やんけ！ たかだか10回程度ではこれくらいの偏りは起きるということになります。
ちなみに1/6を6回引いて1回以上出る確率は66.51%で、
1/nをn回引いて1回以上出る確率は約63.21%です。
排出率1％のガチャを100回引いてもまあ結構出ないということですね。
（1％を90％の確率で当てようと思ったら230回必要です）
そういうわけでTOWEER のようなランダム要素のあるゲームにおいて、
体感で偏りを感じること自体は実際の乱数に偏りがあることを裏付けるわけではありません。
1/8192 というゲームがいかに怖いかわかったところで次の前提です。
前提2：疑似乱数
ゲームについて話すとき「乱数」という語を使うことがありますが、
デジタルなゲームで実際の乱数が使われていることはまずありません。
そんなんわかってるわという方は読みとばしていいです。
真の乱数は予測も再現もできません。
例えば実際のサイコロを振るとき、今まで出た目から次に出る目を予測することは全くできません（＝計算不能）。
コンピュータは計算する機械なので、乱数っぽいものも頑張って計算で導き出しています。
このような乱数は擬似乱数と呼ばれ、計算なので生成方法と初期値のような重要情報を知っていれば予測・再現も可能です。
マインクラフトなんかで「普段はランダムだけどシード値指定したら同じマップになる」のは計算方法のおかげですね。
​どう頑張っているかというと、いろんな手法を使っているわけです。
手法を使っているということは、擬似乱数の中には微妙なものもあるということになります。
例えば、コインの2分の1をシミュレートするとして、ある擬似乱数生成法が
表、裏、表、裏、表、裏、表、裏、表、裏……
のように法則丸見えだったらまずいですよね。
実際は偏るときは偏るわけで、そのあたりをうまいこと本物のランダムっぽくしてある方が望ましいのです。
そういうわけで、疑似乱数には質の良い、悪いがあり、
TOWEER のようなデジタルゲームの乱数が体感を超えて変だな……と思うとき、採用している疑似乱数の質が良いか悪いかを考えることになります。
疑似乱数生成法と質
ゲームに採用された疑似乱数の質を考えるには、
ゲームに使われそうな疑似乱数生成法の種類と、実際に使われているだろう疑似乱数を考察する必要があります。
ところでガチャ要素とかレアドロップ要素のあるようなゲームが「確率操作している！」って言われていることがたまにあるのですが、
ま～～～どのゲームでもあんまりそういうことはしてないんじゃないかな……工数とか信頼的に……。
とくに特定のユーザーだけ優遇するとか、不遇にするみたいなのはまずないと思って良いと思います。
コードを書くのもチェックするのも割に合わないです。
乱数はわりと難しい概念（お手製じゃたいてい質が悪くなる）なので、
ゲーム制作では通常すでに用意された生成法をそのまま採用しているはずです。
ここで問題なのが「すでに用意された生成法」が物によっては質が悪いことです。
（質が悪いからといって、価値がないとは限らないのです……圧倒的に処理が軽いとか書くのが簡単とか）
代表的な乱数生成方法はそのゲームに使われているソースの言語とエンジンによって異なるので、
先にTOWEER を開発する際に使われている環境を考えることにします。
TOWEERは何で作られたゲームなのか？
結論から言うとUnity 製ではないかと思います。
WebGL に書き出しが容易なゲームエンジンの選択肢が少ない内製なら無限大だけど……Unity なら開発が容易Unity 6 以前だとモバイルブラウザでの動作に多少ハードルがあったはずなのでそこだけどうかなという感じ逆にUnity 以外でPC・スマホのブラウザに容易に対応できるエンジンがあるのか不明物理演算がなんとなくRegitbody（Unity 標準の物理制御）っぽいPolygon Collider 2D＋Regitbody かなあ……？ コライダーは手付けかもこのサイトに多少なりとUnity が使われている形跡が見える
WebGL というだけならcocos とか一応Unreal Engine とかでも可能ですが、
日本製2Dカジュアルゲームで選択する必要はあまりない気がします。
（開発者が得意としているとかなら有り得ますが）
使われていそうな疑似乱数の質
Unity製のゲームと仮定した場合、使われている疑似乱数は
UnityEngine.Random（Unity エンジン標準の乱数用関数）の可能性が高いです。
Unity はC# という言語を利用しているので、標準C# のSystem.Random は次点で挙げられますが可能性は低いでしょう。
UnityEngine.Random の乱数としての質ですが、良いと言われています。
この関数は内部的にXorShift(128) を利用しているらしく、
これは比較的新しい疑似乱数生成法で高速かつ性能が高いという評判です。
ちょっとした検証を行っている記事もありました。
https://developers.wonderpla.net/entry/2015/01/13/154305
ではUnity製っぽいTOWEER の乱数の質は確実に良いのでしょうか？
こちらも結論から言うと、たぶん良いです。
たぶん、と言うのはいかに優秀なUnityEngine.Random を利用していたとしても、
使い方によっては偏りを発生させることがあります。
ただTOWEER のイラストランダム抽選システムでは、シンプルな使い方で十分なはずなので、問題ないだろうという推察からです。
偏りの出る使い方としては、「シード」を使った場合にその使い方が良くないとパターン化が起きてしまうというものが挙げられます。
興味のある方は以下を参照してください。
https://hacchi-man.hatenablog.com/entry/2022/12/28/220000
結論
TOWEER の乱数の質はたぶん問題ない乱数はそもそも偏ることがあるので、同じイラストが3連続で来ても泣かない　3連続は結構すごいね